年間10万トン以上のウナギを消費している日本は,ウナギ資源について最も重い責任を持つ。ウナギは食料として重要であるのみならず,日本人にとって非常に親しみ深い魚である。多産や安産の信仰対象であり,古くから和歌や俳句,文学および様々な芸術の対象として取り上げられて来た。仔魚の回遊,シラスウナギの加入,集団構造,系統発生および養殖にむけたシラスウナギの人口種苗生産において,最近の十年間でニホンウナギの生活史研究は大きな進歩を遂げている。しかしながら,東アジアにおける本種の資源保全戦略に関する議論は少なく,ウナギの資源保全のための実践的な行動計画の策定が急務となっている。
世界ウナギシンポジウム宮崎大会
日本におけるウナギの資源保全と研究
塚本 勝巳(ツカモト カツミ)
塚本 勝巳(ツカモト カツミ)プロフィール
日本のウナギ研究の第一人者で東京大学海洋研究所の教授。1986年以来「白鳳丸」で二ホンウナギの産卵場調査に従事し、産卵場所をマリアナ諸島のグアム島北西海域と特定するなど、海洋生物の回遊行動や繁殖生態に造詣が深く、現在は特に銀ウナギの生態に興味を持ち新たな調査研究への意欲旺盛な研究者。この度の「世界ウナギシンポジウム宮崎大会」においての各国参加者の取りまとめや座長として一般参加者との橋渡しに尽力いただいたシンポジウム成功の立役者。