- 1. 日本の鰻市場
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日本の鰻市場流通量の推移を別表に示した。
'75には台湾からの輸入を含めて約4万トンであった鰻流通量は、ハウス養鰻の拡大と台湾からの輸入増により'90には10万トンを越えた。
'90頃から中国の輸出産業としての鰻養殖拡大が始まり、A.anguillaの養殖が定着し、活鰻はA.japonica主体、加工品はA.anguilla主体で大量に輸入されるようになり、市場は16万トン近くまで拡大した。
一方食品の安全性に対する消費者の関心は厳しくなり、輸入鰻の薬物残留違反などにより、中国産食品に対する不信感は増大し、'07の米国FDAの発表は鰻にも大きな影響を与え、大手スーパーでは中国産蒲焼を販売しなくなった。これにより中国産加工鰻は激減し、今年のこれまでの輸入統計から推定すると流通量は6万トンを切る状態になると思われる。
この間、国内生産量は加温式になって'85〜'90にかけて約40,000トンの最大生産量となり、その後シラス鰻の不足高騰、輸入品とのコスト競争に敗れ現在は約20,000トンの生産量となっている。しかし、海外生産量の減産により国産鰻に対する需要の高まりから増産傾向にある。
- 2. 日本鰻協会
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1994年 減少する鰻資源に対して、業界として共通してこの課題に取り組む事を目的として、生産、流通、飼料の全国組織が集まり「日本鰻資源保護推進委員会」を設立した。この会においては、シラス鰻の採捕、流通、導入情報の交換、当時日鰻連が実施していた親魚放流事業への支援、成鰻価格動向推定から見たシラス鰻推奨価格の提案発表を行っている。又、研究活動への支援と研究者と産業人の交流の場として1998年に「東アジア鰻資源連絡会」(後に「協議会」)を塚本教授を会長として設立し、これを支援してきた。当協議会は毎年開催され、今年は横浜で開催した。この連絡会の活動が研究者を激励するばかりではなく、将来A.japonica資源の国際的管理にも何らかの形で役立つことが期待される。
多発する安全性問題についても討議される事が多くなり、2007年に会の名称を「日本鰻協会」と改称した。
2007年には東京海洋大学の舞田教授の「AOZ」「LMG」の分析法開発と代謝期間の測定研究に研究費を寄付し、完成された分析法について各漁業協同組合に技術移転を行った。
世界ウナギシンポジウム宮崎大会
日本の鰻市場と日本鰻協会
日本鰻協会 顧問 吉島 重鐵(ヨシジマ シゲカネ)
吉島 重鐵(ヨシジマ シゲカネ)プロフィール
日本鰻協会の顧問としてウナギの資源保護対策に尽力。1998年に研究活動への支援と研究者と産業人の交流の場としての「東アジア鰻資源協議会」立ち上げの功労者。