世界ウナギシンポジウム宮崎大会

インドネシアにおけるウナギの研究と資源保全:シラスウナギの加入

Hagi Yulia Sugeha(ハギ・ユリア・スゲハ) 国籍:インドネシア 性別:女

インドネシアにおける,熱帯シラスウナギの沿岸域回遊および加入機構に関する継続的・定量的な調査によって,ウナギ全18種・亜種のうち9種・亜種がインドネシア列島の西部,中央部,東部にかけて,異なる種構成・個体数で分布していることが明らかになった。インドネシア周辺水域は,世界のウナギの多様性と分布の中心である。しかしながらほとんどのインドネシア人は,魚の一種または美味な食材としてのウナギの重要性を認識しておらず,インドネシア社会の多数派であるイスラム教徒にとって食べることが禁じられている,ヘビの一種としてウナギをとらえている。いくつかの例外の中には,熱帯ウナギの成育場保全に関する大きな可能性が見えてくる。スマトラ島ではウナギはヘビの一種と考えられているが,ジャワ島では美味で,(限られた漁獲時期と漁業技術上の問題により)貴重な食材として知られている。現在に至るまで,南モルッカ諸島および東ティモールでは,ウナギは神であり人間の祖先であると考えられており,ウナギを捕獲すること,食べることの他,ウナギの生息地に立ち入ることも禁じられている。古代スラウェシ島では,ウナギは王とその家族の食卓にのみ供された。このような古代の文化と伝統によって,驚くべき多様な種が自然のまま残された。現在,漁獲圧に配慮しながら、沿岸回遊を行っているシラスウナギおよび降河回遊を行っている銀ウナギの継続的な採集が行われている。世界的な気候変動,環境の悪化,人的な環境劣化およびインドネシアにおける人工構造物の開発によって生じる影響に注意を払う必要がある。単一種の稚魚を漁獲し,養殖することは,インドネシアのウナギの多様性に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって,まず始めは熱帯ウナギを自然の状態で保全し,次にウナギ漁獲が行われている地域で漁業の管理を行い,そのうえで単一種の人工種苗生産を行うべきである。

Hagi Yulia Sugeha(ハギ・ユリア・スゲハ)プロフィール

インドネシア海洋研究所でシラスウナギと下りウナギの生態に関する研究プロジェクトのリーダーを務める若手ウナギ学者。学位はオオウナギの生態について東大で取得。

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