ウナギ属魚類の産卵がはるか外洋で行われていることは、葉形仔魚の分布から明らかにされていたが、産卵場海域で成魚が発見されたことはなかった。水産庁はウナギの人工種苗生産の実現をめざし、天然親魚の成熟に関する知見を得るために、2008年5月21日〜6月14日(前期)と8月20日〜9月11日(後期)にマリアナ諸島西方海域において開洋丸による産卵生態調査を行った。この航海で計5個体のウナギ属成魚の捕獲に成功したので報告する。用いたネットは大型の中層トロール網(最大開口50〜60m)で、合計27回の曳網が行われた。ウナギが捕獲されたときのネットの曳網水深170-300mであった。前期の航海では、成熟した生殖腺を持つ雄のウナギ(Anguilla japonica)2個体(全長48.5, 51.3cm)と成熟した雄のオオウナギ(A.marmorata)1個体(62.3cm)を、後期航海では産卵直後と推定される2個体(55.5, 66.2cm)の雌のウナギをそれぞれ捕獲した。海域は北緯13度〜14度、東経142-143度付近(海深1200-3600)で、いずれも6月と8月の新月に捕獲された。
世界ウナギシンポジウム宮崎大会
世界初、外洋で成熟ウナギを捕獲
張 成年、黒木 洋明、*望岡 典隆、加治 俊二、岡崎 誠、塚本 勝巳
望岡 典隆(モチオカ ノリタカ)プロフィール
九州大学大学院農学研究科水産学専攻博士課程修了。同大学院准教授。専門は魚類の初期生活史。東京大学海洋研究所白鳳丸によるウナギ航海には1986年第4次航海から参加。この夏の水産庁の「開洋丸」の航海で親ウナギの捕獲に成功。