過去30年間またはそれ以上の期間,アメリカウナギは減少を続けているが,その正確な理由は不明である。生息地の消失および分断,疾病,寄生虫,海況,汚染,回遊を妨げる障壁,および水力発電用タービンによる死亡を含む,重大な脅威が存在するが,管理を行う主体が実際に扱うことができるものは数少ない。ウナギの浮き袋に寄生する線虫は北方へと拡大し続け,淡水の生息地の奥まで,アメリカウナギの分布域を覆っている。過去5年間に作成された新しい管理計画によって,いくつかの脅威,特に漁獲圧とダムの通過が対象とされている。アメリカにおいて,ウナギに対する漁獲圧は他国ほど強くなく,漁獲によって影響を受ける個体群が全体に占める割合は比較的小さい。しかしながら,地域単位では,アメリカウナギ個体群はゆるやかな漁獲圧にも影響を受ける。現在重点的に研究が行われているのは,アメリカウナギに必要な生息域(生産および性分化における淡水域の役割を含む)およびウナギ魚道技術の開発である。ダムなど障壁の除去または魚道の設置により,ウナギの生息地が以前のレベルにまで増加する可能性があると考えられる。
世界ウナギシンポジウム宮崎大会
アメリカ合衆国におけるウナギの資源保護と研究
キーワード:アメリカウナギ ウナギ資源管理 資源減少 魚道
Alex Haro(アレキサンダー・ハロ) 国籍:米国 性別:男
Alex Haro(アレキサンダー・ハロ)プロフィール
米政府機関の回遊魚研究所に勤めるウナギ研究の専門家。昨年カナダ・ハリフファックスで開催された国際回遊魚シンポのコンビナーを務めた。現在は、ダム・魚道などの河川構造物の回遊魚に及ぼす影響を研究している。